松尾神社(佐香神社)
鎮座地 島根県平田市小境町108番地清水
祭 神 久斯之神 天津彦彦瓊瓊許尊 百八十神等
大山咋命 木花咲耶姫之命
出雲風土記に、「佐香郷(さかのさと)郡家(こおりのみやけ) の正東(うのかた)四里一百六十歩(あし)なり。佐香の河内に百八十神集い座して、御厨立て給いて、酒を醸させ給いき。即ち百八十日喜讌して解散坐(あらげま)しき。故、佐香と云う」とある。
意訳 河内にたくさんの神々が集まられて、煮炊きする調理場を建て、酒を作らせられた。そして長い間、毎日酒宴をひらいた後、去って行かれた。そこで酎みずき(酒宴)のさかによって佐香というのである」と記されている。
そこから酒にちなんだ神を祀るようになった。初めは酒の神の久斯之神や、造酒に関係のある木花咲耶姫命が祀られていたと思われる。中世になって京都の松尾大社が洒の神として信仰を集めると、祭神大山咋命の分霊を勧請し、いつしか松尾明神と呼ばれるようになり、酒や醤油など醸造の神さまとして広く信仰された。当社には室町時代初期から続いているという特殊神事濁酒祭がある。祭礼に際し、松江藩庁に酒造の許可を願い出ていたが、現在でも大蔵省の許可のもと、年間一石以下の濁酒醸造認可されている。例祭は10月22日であるが、10月1日未明から宮司宅で宮司みずから杜氏となり潔斎した手伝人の奉仕で神酒醸造式を行う。醸した神酒は祭礼の前日、国税庁より派遣された係官の検定を受け、13日の祭り当日には神前に酒桶を供え、酒造関係者がその年の成功を祈願し、濁酒奉納式を行う。島根の酒
島根の地酒…おいしさの秘密
古代出雲が主な舞台として書かれた日本神話。その中でも「八岐大蛇」はよく知られており、この大蛇を退治するときに使われたのが、幾度も熟成醪を搾って造られたという八塩折の酒である。この最もアルコール度の強い酒が造られたという歴史を持つ地で、今日まで連綿と造り続けられている島根の日本酒。
おいしい酒造りには米と水と杜氏、そして汚染されていない自然環境が欠かせないといわれる。島根には酒米生産に好適な地域と酒造りに適した地下水や湧水などの水が各地にある。出雲杜氏、石見杜氏と呼ばれる人々の長い歴史もある。どんなに技術革新が進んでも、酒造りの上でポイントとなる作業に杜氏の果たす役割は大きい。島根の酒
酒米
酒造りには、主食用の水稲うるち米より大粒の「醸造用玄米」を使用する。酒造好適米の条件は米粒の芯に心白があり、軟らかくて粒が大きいことである。現在、全国で約四十種額が栽培されており、島根では改良雄町、神の舞、幸玉、五百万石の四品種が水稲奨励品種として指定されている。県内では、仁多・飯石・大原の三郡が酒米栽培の中心地。徹底した技術指導のもと、和牛の飼育と連動しながら土壌の改良を行い、良質の酒米を作り続けている。島根の酒
水
日本酒の約八〇%は水。「銘酒は良い水から生まれる」という言葉どおり、水質が日本酒の味を決めるといっても過言ではない。酒造用水の条件は、無色透明・無味無臭。適度にカルシウム・マグネシウム・塩素などの有効成分を含む。日本酒の色や香りの妨げになる鉄・マンガンなどの有害成分を含んでいないこと。
酒造りには、自然のままに残されている清浄な水源ほど適している。斐伊川、江の川、高津川上流など中国山地の広葉樹林に降り注いだ雨は花崗岩が風化した真砂(第三紀層)を通過するうち、自然のミネラル分を適度に含んだ日本酒に最適の水となる。
杜氏
酒造りに携わる職人を蔵人といい、その頂点に立つ職人を杜氏という。杜氏は、酒蔵において醸造工程の総指揮を司る、いわば醸造の大黒柱なのだ。伝統ある出雲杜氏は、江戸時代後期ごろ発祥した「秋鹿杜氏」が元となっている。当時の八束郡秋鹿村(現松江市)では、農家の冬場の出稼ぎ労働として、松江市や出雲市、平田市、大社町で酒造りを手伝うようになった。
秋鹿杜氏のまじめで丁寧な仕事ぶりは、たちまち中国五県で評判を呼び、県外の酒蔵からは出雲杜氏と呼ばれるようになったのである。また、県西部には、組織は小さいが石見杜氏がいる。長い歳月をかけて熟練された島根の杜氏の技術は、今なお着実に受け継がれ、その確かな腕前は、「全国新酒鑑評会」での度重なる受賞歴で証明されている。
このように高い評価を得る島根の酒は、全国的に淡麗辛口の酒が主流を占めている中で、平均的には少し甘い方になる。また県内でも出雲部の方が石見部より辛口である。しかし銘柄ごとでは、濃醇な旨味のある酒、酸がきいて押し味のある酒、きめ細かく穏やかな酒、切れの良い酒、五味の調和がとれた酒など、実にバラエティ豊かな味わいをみせる。最近では生酒や吟醸酒、純米酒などが冷ややオンザロックで楽しまれたり、日本酒をベースにしたカクテルが好まれている。
酒の味は食習慣や歴史の影響を受け、その地域の風土の中で培われていく。海の幸、山の幸と旬の味覚が豊富な島根では、肴によってもおいしい酒が育てられてきたといえるのかもしれない。材料も製法も同じでありながら地域ごとに、また酒蔵ごとに微妙な味の違いを呈する日本酒の魅力は奥が深い。その土地の味覚を味わいながら地酒を楽しむ、それも旅の醍醐味の一つといえるのではないだろうか。島根の酒