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岩崎得魚 略歴
 昭和44年 新作名産品審査会優秀賞受賞
 昭和44年 産業貿易館長賞
 昭和48年 島根県特産新作展県知事賞
 昭和48年 島根県特産新作展物産観光館館長賞
 昭和49年 島根県総合美術展金賞
(書道)
 昭和51年 大田市商工会祭優秀賞
 ほか書道で毎日展入選、独立展入選

「得魚」という名、変わった名でしょう。書家の岸田大江先生(故人)に名をもらいました。岩のさき(岩崎)で魚を得たという意味ですよ。私は遅咲きの花でして、40才で木彫をはじめたんですよ。集材作業が本職で酪農や農業もやりました。製材所の手伝いに行ってノコギリを使ったのがきっかけで、大工仕事も彫刻も知らない男が木彫をはじめたというわけです。40の手習いってこのことですね。しかし木彫には若いころからあこがれがあって、こうしたきっかけで芽が出たということになるでしょうかねー。試作の五重塔が県観光物産館で認められ「おもしろい」ということになったんですが、値段をどうつけていいかわからない。それほど木彫の世界のことは何にも知らなかったということです。
そんなとき久手中学校に型破りの岸田大江先生がおられ、書道の弟子入りを頼んだのです。岸田先生は独立書道展でも最高の人、毎日書道展の審査委員もしておられました。それからの私には木彫と書道は車の両輪で、岸田先生にもし出会わなかったら、平凡で哲学のない彫刻師で終わったことでしょう。
ものをつくる前に、まず人間(自分)をつくること。むだな線を徹底的に省いた、余韻のある作品を作る。自分の作品は自分でわからない。作品を鏡に映してみると第三者的や目で見ることができるーなど岸田先生がみんな教えてくださったですよ。「座禅をやってみろ」とアドバイスも受け、近くの円光寺へ出かけ、いまは亡くなられた住職の田尻貫道師に、座禅を組みながら「何のためこの世に生まれたのか考えろ」といわれ、自問自答で「人の喜ぶものを作ろう」と私なりの結論を出しました。
作品は苦しみと戦いながら生み出すもの、それは赤ちゃんが生まれるのと同じですよ。私は作品を生む苦労という仕事の中から「ケヤキ」に魅せられるようになりました。ケヤキが日本の木の中で一番味があるじゃないですか。用材に紫檀や黒檀もあるのですが。あれは黒いだけですよ。特に岩盤の上で育ったケヤキには無限の味わいがありますね。苦労を重ねてきた人には、いうにいわれぬ温かさや哲学があるのと同じで、苦労して育った木はいいですね。
それからケヤキには年代を重ねるごとに色もよくなる、火災にも強い特徴ががあり、もう私はケヤキ一辺倒です。ついたて、花台、飯台など作っていますが、どっしりした厚みのある作品を心がけています。おかげで昭和48年には、県の特産品新作展に「稲田姫」を出品、最優秀賞をいただきました。ケヤキの木目を生かし、女性の線の美を生かすように心がけました。書道の方では毎日書道展入選、独立書道展でも秀作賞を二回いただくなど、車の両輪を育ててきました。
もう一つ私にとってかけがえのない妻の光枝の協力です。仕事の上では同級生で、作品のつや出しなど、最終作業の仕上げは女性でないといけません。作品の柔らかさ、リリシズムは女性の手が加わらないとだめですね。ですから家内の協力にはとても感謝しています。
私にとって協力者であり、先生でもあるのはこの他にお客様だと考えています。私が一番最初に手がけたのは五重塔で、私にとってはライフワークになっていますが「五重の間隔がよくそろっている」と私の気づかぬことを指摘して下さる人もおれば、相輪の形式をアドバイスして下さるのもお客様で、お客様に教えられることが多いのですよ。自我の強い職人根性ではだめだと思いますね。