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【お土産歳時記】
薄明りに白く雪を纏った杉木立。せせらぎの微かな水音が、更に一層の静寂となって冷気を震わせ、参道にも石畳にも脚跡さえなく、冬の朝はまだ微睡の中に在る。天台宗の古剃、安来・清水寺のすぐ下に明治初頭より羊羹の製造を営んでおられる西村堂さんの一日は、朝五時すぎ、赤小豆を煮込む釜の火を入れるところから始まります。
約一時間半余りかけて炊きあげられた小豆が、水を加えられ漉し器に入れられ皮を分離されると、白い湯気は甘い香りをいっぱいに含んで濠々とたちのぼります。一方、水に浸してあった寒天と、漉したばかりの解と砂糖とを別の釜で更に二時間、かき混ぜながらぐつぐつと煮続け、練りあげたものを舟に流し込むと、あとは冷めて固まるのを待つだけです
「あんまり(商売を)大々的にやると粗雑になるけえねェ」と、豪放に笑いながら清水の西村庫一さん。
清水寺の緑を貸りて、参拝の人らに売るようになったのが西村堂の始まりで、現在も餡をつくるところから包装までをみんな家内工業的にやっとります、との事。元々、禅宗文化とともに中国より渡来し、精進料理の汁の実としてあった羊羹も、時代の移り変りやまた土地柄によって様々な形となっているようですが、この"清水羊羹"は添加物など一切使わず、甘すぎないのが特長です。よくある他の羊羹のようにやたら甘すぎず、どちらかと言えばあっさりとしているだけに、小豆の風味がほのぼのと口の中に拡がって、特に御抹茶に良く合うようです。また嬉しいのは、包んである竹の皮のあたたかな風合。今では珍しいこの昔ながらの包装素材も、清水羊羹ならではのものです。
探い情趣をたたえた清水山の佇いの中で、時をかけて練りあげられた幽玄の味わい。それは時代を越えて私たちの手元に届けられた、日本の文化そのものでさえあるようです。
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