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柿本人麿
数々の傑作を生み出した歌人、柿本人麻呂。しかしながらあまりにも謎が多く、現在にいたってもなお、そのロマンを追求する者は多い。人麻呂が石見の国を訪れた理由ははっきり分からないが、どうやら人麻呂はここ江津市で依羅娘子と出会い、二人は恋に落ちたらしい。しばし幸せな時間を共有しつつ、やがて人麻呂が都に帰る時が訪れる。愛する者同士、別れを惜しみ、切ない心情を歌に込めて詠み合う。人麻呂は比較的、公的な儀礼の場での歌が多いが、その中で私的に詠んだ上京する際の歌にはロマンがあふれている。
「石見のや 高角山の 木の際より 我が振る袖を 妹見つらむか」
意訳 石見の国の高角山の木の際から、わたしの振る袖を妻は見てくれたであろうか。
「な思いと 君はいへども 逢はむ時 何時と知りてか わが恋ひざらむ」
意訳 そんなに心配するなとあなたは言うけど、次いつ会えると分かっているならこんなに恋しがらないでしょう。どうして恋しがらずにいられましょうか。
当たり前だが、現代のような交通手段・通信手段があるわけもない時代、離れ離れになる二人の切なさは計り知れない。その気持ちが二人の歌からは切々と伝わってくる。もう二度と会えないかもしれない相手の姿を、見えなくなっても心の目で必死に追いかける。襲いかかる猛烈な悲しさを歌に込める。
メール社会の現代では想像し難い状況だが、だからこそ今一度、言葉の持つ重さや意味を我々は二人から学ぶべきではないだろうか?
古代ロマンに包まれた二人の恋物語を、この地で感じていただきたい。
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